みなし労働時間制とは?

営業活動など事業場外で労働するために使用者の具体的な指揮監督がおよばず、労働時間の算定が困難な業務や研究開発など業務の性質上その業務の具体的な遂行については労働者の裁量に委ねる必要があるために、使用者の具体的な指示になじまない業務に関して、労働時間の算定が適切に行われるようにするための制度がみなし労働時間制です。

みなし労働時間制には、次の3種類があります。

  • 事業場外労働に関するみなし労働時間制
  • 専門業務型裁量労働制
  • 企画業務型裁量労働制

事業場外労働に関するみなし労働時間制

外回りの営業や新聞、雑誌、テレビの編集者、記者は外出先でどのような時間配分で仕事をするか個人の裁量に委ねられている場合がほとんどです。

そこで、「労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす」という規定(法38条の2)があります。

ただし、グループで仕事をするときにメンバーの中に管理する者がいる場合、無線や携帯電話でなどで指示を受けながら仕事をする場合、訪問先や帰社時刻などの具体的な指示を受けて指示通りに業務に従事する場合は適用されません。

事業場内で仕事をした後事業場外での業務に従事する場合、またはその逆の場合は事業場外で従事する業務の遂行に通常必要とされる時間と事業場内で労働した時間を合算した時間が労働時間となります。

したがって、事業場内と事業場外の仕事をひっくるめてみなし労働時間とすることはできません。このみなし労働時間が法定労働時間内であれば労使協定を労働基準監督署長へ届ける必要はありません。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制の対象となる業務は以下の通りです。
  • 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  • 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務
  • 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレビジョン放送法第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務
  • 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  • 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  • 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務()

大臣の指定する業務とは、コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウェアの創作、証券アナリスト、金融商品の開発、学校教育法に規定する大学における教授研究、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士の各業務です。

労使協定で定めなければならない事項
対象となる業務
1日のみなし労働時間
使用者が業務の遂行の手段、時間配分等の決定に関し、具体的な指示をしないこと
労働時間の状況に応じて、健康福祉確保措置を講じること
苦情処理措置を講じること
有効期間を定めること
労働者ごとの記録を有効期間中および期間満了後3年間保存すること

この労使協定は、労働基準監督署長へ届けなければなりません。

企画業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制が事業場を選ばなかったのに対して、企画業務型裁量労働制は労使委員会の設置されている事業場に限られます。

「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(=労使委員会。使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、決議によって定められた時間労働したものとみなす。」(法38条の4)

  • 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)
  • 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であつて、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
  • 対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間
  • 対象業務に従事する第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
  • 対象業務に従事する第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
  • 使用者は、この項の規定により第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第3号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
  • 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

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