解雇とは?
解雇とは、使用者が労働者に対して行う一方的な労働契約の解除です。
法の手続に則って解雇することは使用者の権利ですが、近年の最高裁判例でも「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる。」とする解雇権濫用法理が確立され、不合理な解雇を制限しています。
ただ、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合」とは個々の実情による部分が大きいため、労働基準監督官などが判断を下すのではなく、裁判に委ねられます。
解雇が制限される場合
- 療養期間中の解雇制限
- 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間は解雇してはいけません。
- 業務上以外の負傷又は疾病による休業期間については解雇制限はありません。また、業務上負傷し又は疾病により治療中であっても休業しないで出勤している場合も、解雇は制限されません。
- 休業後の30日は、休業が1日でも適用されますから解雇はその間できません。
- 産前産後休業中の解雇制限
- 労働基準法が規定する産前産後休業とは、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間とされています。この期間とその後30日間は解雇してはいけません。
- ここで注意しなければならないのは、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)がすべて解雇制限されているとは限らないということです。産前6週間休業せずに出勤している場合は、休業期間中ではないので解雇制限が掛からないということです。
- なお、出産日は産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)に含まれますので、出産予定日から遅れて出産した場合は出産予定日から実際の出産日までも産前休業期間となります。(6週間または14週間より長い産前休業期間もあり得る)
解雇の予告
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に解雇予告しなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」(法20条1項)
ただし書きを適用する場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受けなければなりません。
解雇予告の実際
翌月の30日をもって解雇する場合、少なくとも何日までに解雇予告をしなければならないでしょうか?
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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28 | 29 | 30 | 31予告日 | 1 | 2 | 3 |
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30解雇日 |
予告日は31日までにしなければなりません。1日=24時間ということから、通常であれば予告を受けた時刻はすでに何時間か経過しているので、1日(24時間)未満となります。したがって、予告日の翌日から数えて30日以後が解雇日となります。
解雇予告の日数を短縮できる
予告の日数30日は、1日について平均賃金を支払った場合、その日数分を短縮できます。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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28 | 29 | 30 | 31 | 1 | 2 | 3 |
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10予告日 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30解雇日 |
上の例は、解雇予告手当を10日分支払った場合です。30日をもって解雇する場合、10日分の平均賃金を支払えば10日に解雇予告をすればよいわけです。こう考えると、予告日をもって解雇とする場合は30日分の平均賃金の支払いが必要です。
解雇予告手当は、予告と同時に支払われるべきものですから、予告手当の支払が遅れた場合は支払われた日の翌日が解雇予告の起算日となります。
解雇予告期間中に業務上の傷病または産前産後のための休業が必要となった
解雇予告より解雇制限の方が優先されます。休業期間中とその後30日間の期間に解雇予告期間が満了しても解雇制限により解雇できません。
しかし、改めて解雇予告をする必要はなく(つまり最初の解雇通知は有効)、解雇制限期間が満了する翌日以降に解雇日を設定し直すだけで足ります。
解雇予告及び予告手当なしで即時解雇できる
次のいずれかに該当し、かつ所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合、即時解雇できます。
- 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
- 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合
2番目は、いわゆる懲戒解雇と呼ばれるもので、社内での窃盗、横領、傷害等の刑法犯や賭博、風紀びん乱などにより職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼした場合などがこれにあたります。
解雇予告の適用除外
次の労働者については解雇予告をしなくても解雇ができます。
原則 | 例外(適用される) |
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日々雇い入れられる者 | 1ヶ月を超えて引き続き使用されるに至った場合 |
2ヶ月以内の期間を定めて使用される者 | 所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合 |
季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者 | |
試の試用期間中の者※ | 14日を超えて引き続き使用されるに至った場合 |
※就業規則等で試用期間を3ヶ月などと定めていても、その長さにかかわらず14日を超えれば解雇予告の規定が適用されます。