賃金
賃金は次のように定義されています。(法11条)
- 賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず
- 労働の対償として
- 使用者が労働者に支払うすべてのもの
すべてのものとは言うものの、結婚祝い金、死亡弔慰金、災害見舞金などの任意恩恵的なものは原則として賃金とは認められません。
しかしながら、労働協約、就業規則、労働契約などによって予め支払条件が決められているものは賃金とみなされます。
賃金の支払い方法5原則
生活の糧である賃金が、労働者へ確実に渡るように
- 通貨払い
- 直接払い
- 全額払い
- 毎月1回以上払い
- 一定期日払い
という原則があります。
ただし、通勤費を通勤定期の支給に換えたり(通貨払いの例外)、労働組合費を天引きしたり(全額払いの例外)することは認められています。また、臨時に支払われる賃金、賞与などについても例外扱いされます。
銀行振り込みは?
通貨払いの原則からすれば違法ですが、労働者の同意を得た場合に限り、労働者が指定する銀行などの金融機関への振り込みは認められています。ただし、会社指定の銀行への振り込みを強制したりすることはできません。労働基準法施行規則では、銀行などへの振り込みに関して、労働者から同意書をとらなくてもよいとされていますが、前述のようなケースもありますから同意書を作成して保管すべきでしょう。一定期日払い
期日が特定できる方法であれば、10日、25日など日を決めなくても月末払い、土曜日払いなどとしても合法です。月給制の場合に、毎月第4金曜日などとすることは期日が特定できませんから、この方法は認められていません。
平均賃金
仕事中にケガをして休業する、使用者の責任で休業させられたなどの場合に、その補償額を計算する基になるのが平均賃金です。
労働基準法で、平均賃金を用いて額の算定を行うのは次の場合です。
- 解雇予告手当(解雇制限と解雇予告を参照)
- 休業手当(使用者の責めに帰すべき休業をさせたとき)
- 年次有給休暇中の賃金(有給休暇の利用を参照)
- 災害補償(業務上負傷し又は疾病にかかり又は死亡した場合)
- 減給の制裁の制限額
平均賃金の算出方法
平均賃金=算定事由発生日以前3ヶ月間の支払われた賃金総額÷その期間の総日数
実際の運用に際しては、算定事由が発生した日は含まずその前日から3ヶ月間となります。ただし、賃金締め切り日がある場合は、直前の賃金締め切り日を起算日として算出します。また、雇い入れ後3ヶ月未満の者に関しては、雇い入れ後の期間を算定期間とします。
平均賃金の最低保障
賃金の全部又は一部が日給、時間給、出来高払い制その他の請負制によって支払われる場合は、3ヶ月間に欠勤日数が多いと平均賃金も低くなってしまうので、最低保障額の算出方法が定められています。
1.賃金が労働した日、時間で算定される場合や、出来高払い制その他の請負制で定められた場合の最低保障額
3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の労働日数×60%
2.賃金の一部が月、週その他一定期間によって定められた場合(月給制と日給制の併給など)の最低保障額
3ヶ月間に支払われた賃金総額÷3ヶ月間の総日数+(1で算出した額)
次の休業期間等がある場合は、日数、賃金とも除いて算出します
- 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
- 産前産後の女性が法65条の規定によって休業した期間
- 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
- 育児休業又は介護休業をした期間
- 試みの使用期間
次の賃金は、賃金総額から除いて算出します
- 臨時に支払われた賃金(結婚祝い金、大入りなど)
- 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)
- 通貨以外のもので支払われた賃金で、一定の範囲外のもの(現物給与など)
一定の範囲には通勤定期などがあります。
年俸制の平均賃金
年俸の一部を夏と冬の賞与として支給する場合、その賞与に相当する賃金は3ヶ月を超えて支給される賃金にはなりません。つまり、年俸総額の12分の1を1ヶ月の賃金として平均賃金を計算します。
非常時払
「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」(法25条)
厚生労働省令で定める非常の場合とは、労働者又は労働者の収入によって生計を維持する者が次の要件に該当する場合です。
- 出産
- 疾病(業務上、業務外問わず)
- 災害(洪水、火災、地震など)
- 結婚
- 死亡
- やむを得ない事由による1週間以上の帰郷
この6つのケースに限り、労働者が請求すれば、それまでに労働した分に対応する賃金を支払わなければなりません。
休業手当
「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中その労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」(法26条)
使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当する例として、原材料不足による休業や円高による輸出不振における休業が挙げられます。
休業手当は、所定の賃金支払日に支払う必要があり、また、休日と定められている日については支払う必要がありません。
出来高払制の保障給
「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」(法27条)
原材料不足による手待ち時間の増加や原料の品質が悪いため出来高が減少した場合、その労働時間に応じて一定額の賃金を保障しなければなりません。