残業

残業という言葉は労働基準法にはなく、時間外労働および休日労働といいます。時間外労働または休日労働は、原則として禁止されていますが、次の場合には時間外または休日に働かせてもよいことになっています。

  • 災害の発生あるいは通常予見されない緊急の場合
  • 業務が繁忙の場合

災害の発生あるいは通常予見されない緊急の場合とは?

非常災害と認められるものとして、「単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。急病、ボイラーの破裂その他人命又は公益を保護するための必要は認めること。事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械の故障は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な手入は認めないこと。電圧低下により保安等の必要がある場合は認めること。」(昭和22年9月13日基発17号、昭和26年10月11日基発696号)とし、厳格に運用すべきものである旨通達されています。

非常災害等により時間外あるいは休日労働をさせる場合は、事前に所轄労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。また、事態急迫のため事前に許可を受けることができないときは、事後遅滞なく届け出なければなりません。しかし、そこで許可を受けることができなければ、その時間に相当する休憩または休日を与えなければならない旨が命令されます。

業務が繁忙の場合、時間外労働を合法化する手続とは?

法36条1項に「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。」と規定されています。

つまり、使用者は労働者の過半数を代表とする者と話し合って、時間外労働及び休日労働をさせてもよいという合意が得られれば、その合意を書面にして所轄労働基準監督署長へ届け出た場合に限り、時間外労働及び休日労働をさせても刑罰が科せられることはないという規定です。

この労使協定は、一般に36(さぶろく)協定といわれ、この協定をせずに時間外及び休日労働をさせると、割増賃金を支払っていても使用者は罰せられます。

1つの事業場に労働組合が2つあって、そのうち1つが労働者の過半数で組織されている場合、その労働組合と協定を締結すれば有効となります。さらに、その協定は別の組合員に対しても効力を有します。しかし、2つとも過半数に達していない場合は、全労働者の過半数を代表する者を投票や挙手等の方法で選出しなければなりません。

時間外又は休日に労働させる必要のある具体的事由
時間外又は休日に労働させる必要のある業務の種類
時間外又は休日に労働させる必要のある労働者の数
1日及び1日を超える一定の期間についての延長することができる時間又は労働させることができる休日
有効期間(労働協約による場合を除く)

労使協定と労働協約

労使協定は、労働者の過半数を代表する者と使用者との間で協議合意された事項を書面に表したものですが、労働協約は、労働組合と使用者との間で協議合意されたものをいいます。したがって、労働組合員に対して効力を有するもので、非組合員や労働組合が複数ある場合は、他の組合員には及びません。ただし、締結した労働組合の組合員数が全労働者数の4分の3以上であれば、他の同種の労働者に関しても労働協約が適用されます。

労働協約は就業規則と同様の拘束力がありますが、労使協定には拘束力はなく、締結すれば禁止事項を行っても法的な責任は問われないという免罰効果をもつというものです。

何時間でも残業させることができる訳じゃない!

厚生労働大臣は労働時間の延長の限度を定めることができる(法36条2項)と規定があるように、無制限で残業を認めているわけではありません。

期間1週間2週間4週間1ヶ月2ヶ月3ヶ月1年間
時間15(14)27(25)43(40)45(42)81(75)120
(110)
360
(320)

※( )内は1年単位の変形労働時間制(対象期間が3ヶ月を超えるものに限る)を採用した場合の限度時間

上の表から、1ヶ月であれば、毎日残業があっても1日2時間くらいに抑えなさいということです。昨今過労死の問題がクローズアップされていますが、労災認定に関して重要視される時間外労働時間(残業時間)が発症前1~6ヶ月平均で45時間を超えると脳血管疾患や心臓疾患のリスクが高まり、100時間を超えると非常に強まるという判断がなされています。

業種によっても残業時間が制限されています。坑内労働や健康上特に有害な業務に関しては、1日の労働時間延長は2時間を超えてはならないとされています。これは法定の8時間を超える部分ではなく、変形労働時間制を採用している場合は所定労働時間を超える時間を2時間以内にしなさいという意味です。

健康上特に有害な業務とは?

  • 多量の高熱物体取扱業務及び著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体取扱業務及び著しく寒冷な場所における業務
  • 有害放射線にさらされる業務
  • 塵埃又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  • 異常気圧下における業務
  • 身体に著しい振動を与える業務
  • 重量物取扱等重激な業務
  • ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  • 有害物の粉塵、蒸気又はガスを発散する場所における業務
  • その他厚生労働大臣の指定する業務

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