有給休暇の利用

有給休暇は一定条件を満たせば誰にでも与えられる権利で、原則として、その権利の行使には時期や理由の制限はありません。

しかし、有給休暇(年次有給休暇)を利用するに当たりいくつかの取り決めがあります。すなわち、労働者が請求する時季を使用者が変更できる権利(時季変更権)であったり、計画的付与であったりします。

使用者には時季変更権がある

原則として、労働者が有休を請求したとき、その請求する時季に与えなければなりませんが、事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季にこれを与えることができる、と定められています。

「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、年末などの業務繁忙期や同時に多数の休暇請求があり、経営上全員に休みを与えることが困難な場合が該当します。

退職時に残っていた有休を全部使いたい

この場合、使用者の時季変更権は行使できません。本当に請求された時季が業務繁忙であっても、労働者は退職すれば有休の請求権はなくなりますからその時季でなくては行使できません。したがって、使用者の時季変更権より労働者の時季指定権が優先されます。

有休を半日単位または時間単位でとりたい

労使協定で次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができます。

  1. 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
  2. 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る。)
  3. 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇1日の時間数(1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日平均所定労働時間数。次号において同じ。)を下回らないものとする。)
  4. 1時間以外の時間を単位として有給休暇を与えることとする場合には、その時間数(1日の所定労働時間数に満たないものとする。)

有休を日単位で取得するか時間単位で取得するかは労働者の意思によるものなので、労働者が日(時間)単位で希望した場合に使用者が時間(日)単位に変更することはできません。

計画的付与の注意事項

労使協定により、有休を与える時季に関して定めをしたときには、労働者が毎年権利を取得する有休日数のうち、5日を超える部分(前年からの繰り越し日数を含む)についてはその定めにしたがって有休を与えることができる、とされています。これを年次有給休暇の計画的付与といいます。

本来の目的は、有休の取得率を高めるためですが、使用者からすれば年間休日数を増やさずに(言い換えれば年間労働日数を減らさずに)労働者に休暇を与えることができ、単位時間当たりの賃金を抑えることができます。(詳しくは、「賃金」ページをご覧ください。)

労使協定で定められた計画的付与は、使用者の時季変更権も労働者の時季指定権も行使できません。また、計画的付与は事業場全体による一斉取得に限らず、個人別、グループ別の交替制でも行使できます。

有休の権利がない新入社員に計画的付与はできない?

多くの企業では、有給休暇の管理を簡素化するために、継続勤務の基準となる日(基準日)を一律事業年度の初日などに設定しています。

たとえば、4月1日を基準日にしている企業が5月の連休前後に計画的付与により有休の一斉取得を労使協定したとすると、4月1日入社の新入社員は継続勤務6ヶ月を満たしていないので有休自体の権利がありません。

この場合は本来の基準日である10月1日から6ヶ月遡った4月1日までの期間の全労働日を出勤したとみなし、年次有給休暇の取得権利を与えます。

したがって、翌年度も基準日を繰り上げることとなりますから、出勤率の計算では4月1日から9月30日までの全労働日はすべて出勤した日としてカウントされます。

ところが、こういう繰り上げの制度を取り決めていない場合に、有休取得の権利のない労働者を他の労働者の一斉有休取得日に休ませたら、休業手当を支払う必要があります。

有給休暇の有効期間

取得した有休は、その1年間で消化しなかった場合、翌1年間に限り繰り越すことができます。

有給休暇の買い上げ

有休の買い上げを予約して、有休の日数を減らすことは労働基準法違反となります。この違反に関しては、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。ただし、法定年次有給休暇日数をこえる日数分に関しては、法違反とはなりません。

有給休暇中の賃金

次の3つのうちいずれかの方法で支払わなければなりません。

  • 平均賃金
  • 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額

有休休暇中の賃金につては、あらかじめ就業規則等で定めておく必要があります。また、標準報酬日額相当額を支払う場合は労使協定が必要です。(もちろん就業規則にも)

平均賃金とは?

労働基準法では、平均賃金を用いて手当等の額を算定することになっています。解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金、災害補償、減給の制裁の制限額に適用されます。

これらの算定すべき事由が発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額が平均賃金です。

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